子ども同士がケンカをしたら
「ケンカはやめなさい!」、「ケンカをしない!」。
これは、子ども同士がケンカしたときに、多くのママやパパが使う言葉です。しかし、こう言って叱ったからといって、ケンカをしない子どもに育つでしょうか? 答えはNOです。
私はこの言葉の代わりにこう言って自分の子どもたちを育てています。
「どうやったら仲良くできるか、考えなさい」。
ケンカをするのは自然なこと
子ども同士がケンカをするのは当たり前です。違う人間なのですから、意見が合わないことがあるのは自然なことです。大人同士でも、意見が合わないことはよくあります。
大人と子どもの違いは、意見の衝突(=ケンカ)がないことではなく、意見が合わないときの解決策を見いだせるか否かです。
そもそもケンカをなくすことは、不可能です。
ケンカをやめることが重要なのではなく、その機会に解決する力を育てることが大切です。
この考えのもとに、私が実践しているケンカの際の関わり方を紹介します。
呼ばれるまで仲裁に入らない
4才差の我が家の子どもたちは、どこにでもいる子どもと同じようによくけんかをします。
たとえば、娘(8才)の持っているおもちゃを息子(4才)が貸してと頼んだのに、「今はだめ」と断られ、しまいには取り合いのケンカが始まります。
ケガの危険性がないかだけ注意して、私は用事をしながら様子を見守ります。私が仲裁に入らなくても解決できる時もあるからです。
言い争いながらも自分たちで納められるときは、親が入る必要はありません。
手の出し方が強くなり過ぎたり、言葉での罵倒が酷すぎたりしたら、「今の殴り方は危ないよ!」「今のいい方は言い過ぎだよ」と言って仲裁に入ります。
双方の言い分を聞き、謝るポイントを確認する
息子が泣きながら「お姉ちゃんが貸してくれない!」と私に走ってきたところで、私は2人に事情を聞きにいきます(娘の方が泣きついてくることももちろんあります)。親が冷静な気持ちで、中立の立場から話を聞くことが大切です。
「お姉ちゃんが貸してあげないからでしょ」や「先に叩いたの見たよ、それが悪い」など、どちらかが悪いと決めつける発現を最初からしないように気をつけてください。私も時々言いたい気持ちになることがありますが、それは飲み込むようにしています。
子どもを責めてしまうと、子どもの怒りの気持ちがよけいに引っ込みがつかなくなってしまうからです。また、自分の気持ちをママはわかってくれない、という新たな怒りも生みます。
それぞれの言い分を聞き、こういう状況だったんだねと整理したところで、「お互いに叩いてしまったから、痛くしたことについては2人とも謝ろう」と促します。
息子が先に「痛くしてごめんね」と言うと、娘は「いいよ。私も痛くしてごめんね」と返答し、息子も「いいよ」と返しました。
ただ単に謝りなさいと言っても子どもはなかなかできません。しかしこのように「痛くしたことについて」「嫌な言葉をつかったことについて」など謝るべきポイントを特定化すれば、子どもはちゃんと謝れるのです。本当はそれがいけないことだとわかっているのですから。
仲直りの儀式をさせる
お互いに謝れたら、仲直りの儀式をさせます。決まった仲直りの儀式をすることは、気持ちを仕切り直すのに役立ちます。我が家では、ハグをし合うことが仲直りの儀式です。
私が「じゃあ、仲直りのぎゅう(ハグ)をしよう」と促します。
たいていは幼い息子の方が素直に姉の懐に飛び込み、それを受け容れるようにして娘が息子をハグし返します。この光景を見ると子どもたちのピュアな心を愛おしく感じて、いつも胸がきゅうんとなります。
身体がふれ合ってお互いの体温を感じることで、言葉だけでは伝えきれない気持ちを伝えあうことができます。
子どもだってケンカしたいわけではありません。本当は仲良く楽しく遊びたいのです。
子どもの中の「本当は仲良くしたいんだ」という気持ちは、ハグするとしっかり伝わりあうものだと、自分の子どもたちを見ていていつも私は感じます。身体と身体が触れあうことは、相手を受けいれる気持ちとつながっているのです。身体が触れあうことで、怒りに満ちていた心も自然とゆるみます。
私の方から「ほんとは仲良く遊びたいもんね。ケンカをずっとしてたって、おもしろくないよね」と、補助的に声をかけをするようにもしています。
子どもたちの表情を見ていると、ハグしながら怒りや悲しみがだいぶ治まり、許しあう気持ちに変わったことが感じられます。
もしハグをすることが難しいようなら、握手を促してください。これなら比較的ハードルが低いので、たいていの子どもはできます。握手ができたところで、「じゃあ次はぎゅうってしよう」と促せればなおよいでしょう。
握手とは反対側の手で相手の肩に手を回したり、背中をポンポンと叩いたりと、握手をした動きの延長線としてけっこうできてしまうものです。
その他、子どもがやりやすい儀式を工夫してもよいです。男の子同士であれば、握手をした後にお互いのこぶしを突き合わせるポーズをしたり、頭と頭を軽くくっつけるポーズをしたりすることが受け容れやすいかもしれません。
このような仲直りの儀式は、親と子どもの間でもやることが大切です。
私も子どもを叱った後や思わず声を荒げてしまった後は、ごめんねと謝ってから「仲直りのぎゅうしよう」と言ってハグをするようにしています。親が行動のモデルを示すことは、子どもの学習に大きくつながります。
自主的に解決する力を育てる
仲直りの儀式ができてだいぶ子どもたちの気持ちが落ち着いたら、私は「じゃあ、どうやったら仲良くできるか、考えなさい」と伝え、様子が見える程度の場所に移動します。
事態の収集を、子ども2人の手にゆだねるのです。
娘がややしぶしぶながら「じゃあ私があと1回使ったら貸してあげる。それでいい?」と息子に声をかけます。それを聞いた息子は「うん、わかった」と返事をします。
最初はぎこちなくても、5分もすればもう仲良く遊びだします。
今回は娘が仲直り案を提案しましたが、4才の息子が先に提案することももちろんあります。たとえば、ほかのおもちゃを手に取って「ボクはこれで遊べるから、それがなくても大丈夫だよ」と言ったり、「じゃあ明日貸してくれればいいよ」と言ったりと、4才でもちゃんと考えて解決策を出す力はあるものです。
4才も下の弟に先に譲られると、さっきまで貸したくない気持ちでいっぱいだった娘の方が「ううん、いま貸してあげるよ。もう私使い終わったから」と貸してあげられることもよくあります。
ここで大切なことは、親が指示をしないことです。指図されて言った言葉には、心がこもりません。イヤイヤな気持ちで「貸してあげる」と吐き捨てられても、言われた方は「そんな言い方じゃ受け取りたくない」という気持ちになるだけです。
この方法をはじめて最初のうちは、子どもから解決策が出てこないかもしれません。その場合は、指示をするのではなく「◯◯というふうにしたら?」と提案する形で助け舟を出してあげましょう。
自然にケンカの数が減る
関わり方を繰り返していると、自然とケンカの回数が減ります。それは、ケンカまでいかなくても小競り合いが始まった時点で、「どうしたら仲良くできるか考えてね」と声をかけるだけで、子どもが自分たちで工夫するようになるからです。
もちろんケンカに発展することもありますが、そのときはまた同じように対応するだけです。
わざわざ私が声をかけなくても、子どもが自然と「どうしたらこの意見の不一致を乗り越えられるか」を考え、うまい提案ができることも増えてきます。
ケンカはやめさせなければいけないものではなく、解決する力を身につける大事な機会です。そしてこの力は、将来親が居ない場面で壁に突き当たったときに、必ず子どもを助けてくれます。