夜泣きが続くと、育児がまわらなくなる現実

「もう一ヶ月近く、夜中に4〜5回起こされてしまい、寝不足続きで体力的に限界。

こうなったら断乳をしたいと思う一方、どうしても踏み切れない」

私の勤務する子育て支援施設にご相談にこられたTさんも、そういう悩みを抱えていました。

話を伺っていると、ママの体力は限界に近づいていると思えました。一週間前から風邪を引いてしまい、ずっと治らないことでさらにつらくなっている状況でした。

夜泣きの時期は、産後からずっと続いてきた寝不足によりただでさえ免疫力の落ちているママの身体に鞭を打ちます。このため、風邪をひいたりアレルギー症状がひどくなったりうつ症状が出たりと、心身ともに体調不良になりやすい時期でもあります。

Tさんは、眠れないことによる弊害が生活のあちこちに出ている状況でした。

子どもと一緒に昼寝してしまうため、日中の家事がはかどりません。洗濯物を畳むことができず、リビングの一角にどんどん山積みとなったまま。ご飯をきちんと作る時間も気力もないので、簡単な菓子パンで済ませてしまうことも多くなってきているとのことでした。

疲れてしまって、日用品の買い物に出るのも億劫になってしまっている、とも話していました。

子どもは10ヶ月になり、上手に伝い歩きをしていました。そのため「あちらこちら手を伸ばしてはものを全部出す」といういたずら盛り。結果として、部屋にものが24時間散乱し放題です。

子どもの自己主張も出てきて、「外に出たい!」とアピールするように大泣きされたり、ママが遊び相手をちゃんとしてくれないと怒ってママに馬乗りになったりするような毎日。

ゴミ屋敷のようにちらかった家の風景が、本来は家の中をきちんと片付けておきたい性分のママにとって非常に大きなストレスとなっていました。

でも、片付ける気力と体力、それに時間がない状況。

こうしたイライラが溜まりに溜まり、それが「いたずらをするわが子を必要以上に強く叱る」形で噴出していました。

 

断乳に踏み切れない理由を見極める

「夜、自分がちゃんと眠るためには、断乳をするしかない」

と、ママ自身もわかっていました。

しかし、

「おっぱいをやめるのが可哀想な気がしてしまうんです。

飲んでいるとき、こんなに幸せそうなので、

とりあげるのは残酷な感じがしてしまって。」

と気持ちを語り、断乳に踏み切れずにいました。

そこで、断乳が親子にもたらす利点を挙げる作業を一緒に行いました。

・ママがよく眠れるようになる

・ママの気力と体力が回復し、気持ちに余裕が生まれる

・片付けや家事が進むようになる

・子どもを必要以上に厳しく叱らなくて済むようになる

・子どもの遊び相手をもっと楽しくしてあげられる

・栄養面に配慮したご飯を作れるようになる

・気分転換の外出ができるようになる

・親子の行動範囲が広がり、子どもの成長が促進される

このように書き出したリストを眺めてTさんは、

「わあ、こうなったらやっぱりいいですよねえ」

とため息をつきました。

しかしそれでも、「私、断乳します!」という言葉は出てきません。

そこで、断乳をしたらなにが心残りかと聞いてみたところ、

「おっぱいを飲んでいる子どもの顔を見ているのが好きなんです。

もうこれが見れなくなっちゃうのか…、と思うと

どうしても踏み切れないんですよね」

と話してくれました。

なるほど、と私も思いました。私自身も母乳で子どもを育てていたので、この気持ちはよく理解できました。

この葛藤は、断乳をしたいけれど実行に踏み切れない多くのママに共通しています。

母乳を飲ませているとき、乳首を吸われる刺激によりママの脳内ではオキシトシンという幸せな気持ちにしてくれるホルモンが分泌されています。かわいいわが子がおっぱいを飲む時間は、ママにとっても心安らかな幸せな時間なのです。

そこで、提案しました。

「では、断乳前に、おっぱいを飲む子どもの姿を写真に撮っておいてはどうでしょう。

第三者に撮ってもらうのではなく、ママの目線から

カメラのシャッターを押してください。

そうすることで、おっぱいを飲ませているときの姿を

そのまま残すことができますよ。」

これで最後の授乳だと思いながらおっぱいを飲むわが子を写真に納めることは、ママにとっては断乳する気持ちを固める儀式的な役割を果たします。

この提案を聞いてTさんは

「それ、いいですね! ぜひやってみます! 

そうしたら、断乳できそうな気がします」

と言いました。

断乳に踏み切れなかったのは、子どもが可哀想だと思うからではなく、本当はママ自身が授乳を手放せなかったからだったわけですね。

Tさんには、このあと断乳の具体的方法についてお話しして、1週間後にまた会う約束をしました。

 

原因に対応すれば、断乳は実現できる

1週間後に会ったTさんは、晴れやかな表情でした。

「今日で断乳して5日目です! 

本当に3日目からは朝まで寝てくれるようになって、こんなに楽になるなんてとびっくりしています。

写真も撮りました!

これで最後だって思いながら撮って、いつでも写真を見ることができると思ったら、気持ちがふっきれました。

ありがとうございました!」

とキラキラした表情で報告してくれました。

普段から優柔不断な傾向があり子どもに流されがちなTさん。そんな彼女を知っていた私は、実際のところはどうなるかな、断乳する意志が無事に固まって成功してくれますように、と祈るような気持ちでこの日を迎えたので、とても嬉しかったです。

もし、今断乳を考えつつも踏み切れないのだとしたら、このTさんのように自分にとってのその理由がなにか、じっくり考えてみましょう。

断乳をすることのメリット挙げるだけで、決断できる場合もあります。

デメリットを感じるのであれば、それに対する対案を準備することができます。

たとえば、「授乳は母子の大切なスキンシップ」と思っているママだと、「断乳をしたらスキンシップが減ってしまう」と心配します。しかし、よく考えれば断乳以外の方法で子どもとスキンシップを取ることは充分できるわけです。

今まで以上にハグやキスをしてあげたり心がけることは可能ですし、ママの体力が回復する分多く遊んであげられたり、子どもをもっとかわいいと感じる余裕が生まれたりするでしょう。

Tさんのように、自分の気持ちの問題だと気づいた場合は、このように対応策を考えることが可能です。

断乳をしたいけれど、踏み切れない。そんなときはこのようにして、なにが自分にブレーキをかけているのか整理してみましょうね。