「私メッセージ」とは

「私メッセージ」とは、自分の気持ちを伝えることです。主語に「私は」がつくことから、私メッセージと呼ばれています。

私メッセージを使って子どもを叱ることが、効果的であり、大切です。

叱る時に私メッセージをうまく活用できないと、「あなたは」が主語のあなたメッセージとなり、子どもを責めるばかりになってしまいがちです。

 

あなたメッセージで叱ると、自己肯定感と信頼関係が崩れる

叱っている側が感情的になると、あなたメッセージが強まり、人格否定へつながることが多々あります。

たとえば、お兄ちゃんが弟の使っていたおもちゃを勝手に取ったことで、兄弟喧嘩になったとしましょう。そこでお兄ちゃんを叱ります。

感情的になりやすいAさんは、こんなふうに叱りました。

「勝手に取ったら弟が怒るに決まってるでしょう!

お兄ちゃんなのに、貸してが言えないなんておかしい。

毎回同じことでケンカして、バカなんじゃないの?」

Aさんの叱り方は、以下の特徴があります。

・頭ごなしに叱りつけ、本人の言い分やを聞いたり、状況を生理したりしない

・子どもの人格を否定している

・子どもにとって逃げ場がない

まず、頭ごなしに叱りつけています。もしかしたら、この場面の前に弟が先にお兄ちゃんのおもちゃを取ったということがあり、それを取り返しただけだったかもしれません。最初に本人の言い分をまったく聞かないと、子どもは「自分の気持ちをぜんぜんわかってもらえない」「自分のことなんてどうでもいいんだ」と感じます。

こうした感情は、自己肯定感(「自分は愛されるに値する大事な存在だ」という基本的な感覚)と、親との信頼関係を低下させてしまいます。自己肯定感の低い子どもはさらなる問題行動を起こしやすいものです。親子の信頼関係が低下すると、叱ってもさらに効果がなくなります。

また、叱っている言葉は、「あなたはおかしい」「あなたはバカなんじゃないの?」といった具合に、あなたメッセージです。これは、間違った行動について触れているのではなく、人格そのものを否定する言葉です。

このような叱られ方をされたら、あなたはどう感じますか?

自分の存在を消し去りたいような衝動に駆られたり、存在そのものがいけないと言われているように感じるでしょう。

想像してみるとよくわかりますが、人格を否定する言葉もまた、子どもの自己肯定感を著しく下げます。自分の存在を受け入れ、認めてもらっていないと感じるので、ますます親の言うことへ聞く耳をもたなくなる悪循環にもつながります。

人間は誰しも怒りが沸騰すると、このように相手の人格否定に走りがちです。

しかし相手は子ども。やはりここは、大人である親が冷静になってあげましょう。相手の人格を否定するのではなく、間違った行動そのものについて言及することが大切です。

その上で私メッセージを伝えることで、問題行動の改善がすこしずつ促されるのです。

 

私メッセージで叱ると、コミュニケーションが取れる

一方、私メッセージの発し方を知っているBさんは、こんなふうに叱りました。

「貸してって言わないといけないのは知ってるのに、どうして勝手におもちゃをとっちゃったの?

取られた人の気持ちを考えられないんだとしたら、ママはすごく悲しいよ。

お友達との間でも同じことをしたら、誰も遊んでくれなくなってつらくなるのはあなただよ。ママはそんなふうになってほしくないな」

まず、間違った行動を取った原因があったのかどうか、確認しています。また、「いけないとわかっているのにやってしまった自分」をママが受け入れているメッセージにもなっています。

また、「貸して」と言わずにおもちゃをとる行動をとることがなぜいけないのか、を伝えています。取られた人が嫌な気持ちや悲しい気持ち、もう一緒に遊びたくないという気持ちになる、といったことですね。

その上で、「相手を思いやれないことが、ママはすごく悲しい」という私メッセージを発しています。

こう言われたら、あなたはどう感じますか?

悲しい気持ちになるぐらい自分のことを真剣に想ってくれているんだ、と感じるでしょう。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになって、思わず「ごめんなさい」と言いたくなりませんか?

謝りたい気持ちは、相手が自分を思う気持ちが伝わったからこそ、生まれる感情です。私メッセージを発したからこそ、子どもが謝ろうと思えるのです。

大好きなママを悲しませてごめんなさい。

自分のことを真剣に想ってくれてありがとう。

また悲しませないように、今度からもっと相手の気持ちを考えるよ。

私メッセージを受け取ったあとの子どもの「ごめんなさい」の中には、こうした感情がこもっています。

「またママを悲しませないように、今度から相手の気持ちを考えるよ」と子どもが自ら思うことが、問題行動を効果的に解消させるのです。子ども自身がそう思わなければ、何度でも同じことをしてしまうのが現実です。

Aさんのように頭ごなしに叱りつけ、「謝りなさい!」と言った後の「ごめんなさい」には、こうした感情はこもっていないはずです。単に、その場を切り抜けるために言ったか、「お願いだから自分を見捨てないで」とすがるような気持ちで言ったかでしょう。

 

私メッセージは、自己肯定感を高め、問題行動を効果的に解消する

このように、私メッセージを使って叱ると、子どもの自己肯定感が損なわれるどころか「それだけ真剣に自分のことを想ってくれている」と感じることができます。

また、深い信頼関係で結ばれているママを悲しませないように、今度から気をつけようと子ども自身が考えることへつながります。いきなり問題行動がゼロになるわけではありませんが、人格否定する叱り方よりも、ずっと効果のある叱り方です。

子どものことで頭にくるのは、ママの中にそれだけ真剣に分かってもらいたいことがある証拠でもあります。一度、自分の中にある感情を見つめてみましょう。

「何度も言っているのに分かってもらえなくて、ママのことをどうでもいいと思われているみたいで悲しい」

「怒りたくないのに、何度も怒らなくてはいけないから、ママは疲れちゃった。疲れているとさらに怒ってしまって、本当はそうしたくないのに、ママもどうしていいかわからなくなっているの。怒ってばかりでごめんね」

こんなふうに、本来伝えたい感情が見えてくるはずです。ぜひ子どもにありのままの気持ちを伝えてあげてください。きっと、なにか気持ちを返しくれて、親子の信頼関係が深まりますよ。