ママの感情が爆発することがあっても、それは自然なこと

思わず感情が爆発して、子どもを叱りすぎてしまったという経験は、どんなママ(やパパ)にでもあります。ふだん一生懸命に子育てをしている真面目なママほど、こんなとき自分を責めて落ち込んでしまいます。

でも、叱りすぎてしまった時に大事なことは、過去の自分の行いを責めることではなく、自分と子どものこれからの関係に焦点を当てることです。

親だって1人の人間です。たまに感情的になってしまうのは、自然なことなのです。「感情的にならない」という目標を掲げたとして、子育てが終わるまでこれを守り続けられる人はいないでしょう。達成できない目標や理想を持つ必要はありません。

私は臨床心理士という仕事柄、子どもに言ってはいけない言葉やしてはいけない関わり方をかなり意識して子育てしていますが、正直に言えば、それでもこのように感情が爆発してしまうことが時にはあります。でも、それでいいと思っています。

そう言うと、びっくりする方もいるでしょう。

私がこう思えるのは、叱りすぎたと気づいたときには、必ず子どもに心から謝って仲直りしようと決めているからです。謝って仲直りをすることがなぜ大切なのかは、叱りすぎが子どもにどのような影響を与えるかを考えればわかります。

 

叱りすぎが、子どもに与えるマイナスの影響とは

では、叱りすぎが子どもに与えるマイナスの影響とは、なんでしょうか?

まずは、感情的に叱られたときの子どもの気持ちになってみましょう。自分が強く叱られたときの記憶を思い出すとわかりやすいでしょう。

・ママは自分が嫌いなんだ、愛されていないんだ

・ ママって怖い

・ママは自分を本当にはわかってくれない

・ママは自分の気持ちを受け取ってくれない

・ママは自分を正しく評価してくれていない

こうして挙げてみると、どの感情でも共通して、ママとの信頼関係が崩れていることがわかります。ママとの信頼関係はその後の人間関係の基盤となるものであり、発達心理学では基本的信頼感と呼びます。

乳幼児期(主に0~3才)に基本的信頼感が充分に育たないと、成人以降も人を信頼したり安定した人間関係を築いたりすることがとても難しくなると言われています。実際、思春期の相談現場で働いたとき、この関連性を実感する事例に多く出会いました。

その意味で、とくに乳幼児期の関わりが大切です。また、学童期以降でもそれまでに築いてきた信頼関係が叱りすぎによって崩れる可能性があります。

このように、叱りすぎによる子どもへのマイナスの影響とは、ママとの基本的信頼感が一時的に崩れることです。

ママが心の中で「悪いことをしてしまった」「明日からは叱りすぎないようにしよう」と反省しただけでは、それが子どもに伝わることはありません。乳幼児であればなおさら、ママの心の動きを読み取ることは困難です。

ではつぎに、自分を責めたからといって修復されない子どもとの信頼関係を、どう回復するかをお伝えしましょう。

 

心から子どもに謝り、仲直りし、関係を修復する

叱りすぎたときは、心から子どもに謝り、大好きだよということを伝え、仲直りをし、親子の関係を回復すればよいのです。

さきほど、「叱りすぎによる子どもへのマイナスの影響とは、ママとの基本的信頼感が一時的に崩れることです」と、敢えて「一時的に」をつけて書きました。人との信頼関係は、変化するものであり、崩れることがあっても関わり方の工夫で回復することが可能です。

謝るときは、スキンシップをたくさんとりましょう。膝に向かい合わせで子どもを乗せ、抱きしめながら、たくさん語りかけてあげてください。ママの体温や心臓の鼓動を感じることで、子どもの安心感がぐっと高まります。

向かい合わせで抱っこするのは、目を合わせられるからです。本当に伝えたい気持ちは、目を見ながら話すことで、格段に伝わりやすくなります。子どもの目の合わせ方や表情で、ママの気持ちを受け取っているかを確認することもできます。

たとえば、こんなふうに言ってあげましょう。

「さっきは◯◯って言い過ぎてしまってごめんね。ママは寝不足で疲れていて、つい大きな声出しちゃったんだ。びっくりして、怖かったよね。怖い思いをさせてしまって、ごめんね。でもあなたのことはいつもいつも大好きだよ。宝物だよ。生まれてきてくれてありがとうね」

 

謝るときのポイント

ポイントは、基本的に4つです。

1) まず自分が間違ってした行動を具体的に伝えます。何を謝っているのか、子どもがわかるようにするのが大切です。

2) つぎに、そうしてしまった理由を伝えます。子どもは「自分が悪い子で、ママはそんな自分を嫌いだから、こんなに怒ったんだ」と、ママが感情的な爆発したのは自分のせいだと捉える傾向があります。叱りすぎた理由を伝える(上の例で言えば、「寝不足でつかれていたから」)ことで、その捉え方を修正できます。

3) 子どもの気持ちに寄り添うことも大切です(上の例で言えば、「びっくりして、怖かったね」)。叱りすぎの場面で「ママは自分のことを分かってくれない」という感情が生まれたとしても、あとからこのようにわかってもらえているんだと体験できれば、そうした疑念が消失していきます。

4) そして、怒りたくて怒ったのではなく、本当は愛していることをしっかりと伝えてあげましょう(上の例で言えば、「あなたのことはいつもいつも大好きだよ。宝物だよ。生まれてきてくれてありがとうね」)。伝えながら、ぎゅうっと抱きしめたり、頭をなでてあげたりすると、より伝わります。

 

子どもの心は寛大

とくに幼児期の子どもの心は純粋なので、大人よりもずっとすんなりと「いいよ」と言って、ママの過ちを許してくれるでしょう。

自分を責めているときに、子どもに許してもらえると心からホッとします。その安堵感は、ママに嫌われてしまったかもしれないと感じた子どもが、やっぱりママは自分のことが大好きなんだとわかったときの気持ちと、まさに同じです。

私自身、わが子の心の寛大さに自然と涙があふれ、自分もそんな広い心をもちたいと、一緒に涙が自然と流れたことが何度かあります。こころとこころが通い合う、というのはこういうことを言うのでしょう。

叱りすぎることがあっても、このようにしっかりとママから謝り、信頼関係をふたたびしっかりと築くことができれば、将来大きな心の問題に発展せずに済むのです。思春期以降の多くのこころの問題は、こうした信頼関係の回復をしないまま時間が経過したことにより、小さな不信感の積み重ねがふくれあがった現れだと言えます。

 

親が謝ることで、謝れる子どもに育つ

また、ママがこのようにして謝ることを心がけていると、子どもはママをモデルとして、自然と謝れる子どもに育ちます。将来よい人間関係を築く上で、自分に過ちがあったときには誠意をもって相手に謝り、関係を修復できる力は不可欠です。

 

親子の絆が深まり、子育てに前より余裕が生まれる

相談現場でこのようにお伝えすると、下の言葉のような事後報告してくれるママがたくさんいます。

「叱りすぎた後は、心から謝って気持ちを通じ合わせれば大きな問題にはつながらないとわかって、前は必要以上に自己嫌悪に陥っていたと気づきました。

今は、叱りすぎてしまっても、ちゃんと対応すれば大丈夫という自信がもてるようになったし、子どもとの絆が深まったように感じます。

なにより、子育てに対する不安が減って、気持ちに余裕が生まれました」。

子育てにおける余裕が取り戻せるというのは、とても大きいことですね。叱りすぎたことで自己嫌悪してしまったら、ぜひこの方法を取り入れてみてくださいね。