根拠のない誉め方は、子どもの自信につながらない

大げさに、たくさん誉めさえすれば、子どもの自信は育つのでしょうか?

0才台の間はYESですが、意志がはっきりしてくる1才台以降はNOです。

 

能力に対する自信の育ち方

ここでいう自信とは、能力に対する自信です。(もうひとつの自信は、愛されている自信で、自己肯定感とも言います。そちらは別記事でとりあげています)。

自分の能力に対する自信は、なにかが出来たという成功体験をピラミッドのようにひとつひとつ積み重ねることで育ちます。

赤ちゃんは、おもちゃを振って音を出せるようになったり、寝返りやハイハイができるようになったり、日々いろいろなことができるようになります。その度にママやパパが「すごいね〜!」「上手だね!」と誉めてあげると、子どもはとても喜びますね。

0才台は、自分を認めてもらえたと感じるだけで、能力の自信が育ちます。

そのため、大人が表情や身振りをおおげさにして誉めてあげることで、より効果的に認めていることを伝えることができます。赤ちゃん時代は、このように大げさにたくさん誉めてあげるだけでも充分だと言えます。

しかし、1才台以降は、子どもは明確な意志を持つようになり、意志どおりにものごとができるか否かが、自信の成長にとって重要となります。やりたいと思ったゴールをクリアできた、という具体的な成功体験が大切になるからです。

つまり1才以降は、具体的な成功体験をどうやってたくさん体験させられるか、が自信の成長の鍵となります。

 

なぜ「すごい」だけでは、自信が育たないのか

たとえば、子どもが自分で靴を履きたがったとしましょう。しかし、マジックテープで留めるタイプの靴だったので、うまく自分で履くことができず、子どもは泣き出しました。

このとき、二通りの誉め方があります。

誉め方A 「頑張って履こうとしたんだよね!

     えらいえらい!

     頑張ったんだからすごいよ!」

誉め方B 「ぺたってベルトを留めるのが難しかったね。

     でも、足を中に入れるのは、上手にできたね!

     足を入れるのなら、自分でまたできるね」

 

誉め方Aと誉め方Bの違いがどこにあるか、わかりますか?

誉め方Aは、頑張った姿勢に言及しています。しかし、本当にこれで今目の前で泣いている子どもの気持ちに寄り添えているでしょうか?

自分で靴を履こうとしてうまくいかずに泣いている子どもの今の気持ち。それはおそらく、「やろうとしたのに、上手く出来なくて悔しい!」ということでしょう。

自分で靴を履くというゴールをクリアできずに悔しい気持ちでいる子どもに対し、「すごい」「えらい」といった言葉は果たして心に響くでしょうか?

自分を慰めようとしてくれていることは伝わるでしょう。自分を大事に思ってくれている、という愛される自信にはつながるかもしれません。

しかし、能力的な自信について考えると、「出来ないのにすごいわけない」と自己否定の気持ちを生む可能性があります。

別の例を出しましょう。

たとえば、自分が大学受験をして、志望校に残念ながら落ちてしまいました。落胆しているところに、親から「お前はよく頑張ったんだからすごいよ」と言われました。このときどのような気持ちになりますか?

「すごくなんかないよ」

「受からなかったら、意味ないよ」

そう思いませんでしたか?

すごい、と言われて自信がつくどころか、むしろいかに自分がすごくないかに目を向けざるを得ませんよね。

自分をなぐさめようとしてくれていることは伝わりますが、「すごい」「えらい」といった漠然とした言葉は、能力的な自信には結びつかないのです。

ある芸能人が、テレビのトーク番組でこのように話していたのを見たことがあります。

「自分は、小さい頃からなんに対しても『すごい、すごい!』と親から誉めて育てられました。

しかし、いつからか「自分は本当にすごいのかな? そんなにすごくないんだけど…」と思うようになり、実はすごく自信のない人間なんです。」

この例からもわかるように、能力的な自信は漠然とした褒め言葉だけでは育ちません。具体的な成功体験をいかにたくさん積むかが鍵です。

 

なんでも成功体験に変える誉め方

そうは言っても、子どもにはできないことがたくさんありますし、なんでも成功に終わるとは限りませんよね。親がいくらサポートしても、うまくいかないことはたくさんあります。

でも、安心してください。

なにかがうまくいかなくて子どもが泣いたり落胆していても、成功体験に変えることは可能です。

やり方は簡単です。やろうとした過程の中で、できたことを探せばよいのです。

さきほどの靴を履こうとした例に戻り、誉め方Bについて見てみましょう。

誉め方B 「ぺたってベルトを留めるのが難しかったね。

     でも、足を中に入れるのは、上手にできたね!

     足を入れるのなら、自分でまたできるね」

まず、「ぺたってベルトを留めるのが難しかったね」と、子どもが悔しいと感じていることに共感しています。共感ポイントが合っていると、泣いている子どもは「うん」と頷くでしょう。

気持ちに共感してもらったことで、子どものこころはいくらか落ち着きを取り戻し、ママやパパの話が耳に入る状態になります。

ここで、靴を履こうとした過程の中で、できたことに着目した声かけをしています。「でも、足を中に入れるのは、上手にできたね!」の部分です。出来たことを具体的に伝えるわけです。

すると子どもは、「そうだ、自分は足を靴に入れることなら、ひとりでできるぞ」と気づけます。

「マジックテープを留めるところまで1人でやる」というゴールだとクリアはできないけれど、「靴に足をひとりで入れる」というゴールならクリアできる。そういう具体的な自信がここで身につくのです。

さきほどの、大学受験に失敗した例でいえば、以下のような誉め方ができます。

「希望の大学に受からなかったのは残念だけれど、

 毎日8時間勉強するという目標を立てて、きちんと実行できたのはすごいことだよ。

 決めた目標を最後までやり通す力を持ってる。それは将来必ず役に立つよ。」

どうですか? こう言われた方が、「そうだ、自分にはできることがある」という自信が湧いてきませんか?

子どもの例に戻ると、結びに「 足を入れるのなら、自分でまたできるね」と伝えることで、この自信を次の機会につなげています。

また今度靴を履きたがる場面があったら、すかさず「じゃ、足を入れるところは自分でやってくれる? それならできちゃうもんね!」と言ってあげましょう。あらかじめ達成可能なゴールを設定してあげるのです。

「それならできるぞ!」と自信満々で、喜々として靴を履いてくれることでしょう。

まだできないのに、再びテープを留めるところまで自分でやりたがるかもしれません。

そんなときは、

「ママが靴を整えるところをやるから、最後の仕上げをやってもらっていい?」

と言って、靴のベロを納める難しいところはやってあげてください。最後にベルトを引っぱるのだけをやらせて「上手にぺたっとできたね!」と誉めてあげれば、子どもの気持ちはかなり満足するはずです。

「仕上げをやってね」は、かなり使えるフレーズです。

あたかも自分が全部やったかのような気持ちになれるからですね。大きな成功体験です。仕上げをやらせるのは、いろんな場面でぜひ応用してくださいね。