1才児の言葉を伸ばす声かけのコツ① 黒子になって代弁する では、黒子のように子どもの目線に入って声かけをすることが、言葉の学習が進むことをお伝えしました。

2番目ののコツは、子どもの気持ちに共感することです。なぜこうすることが言葉を伸ばすことにつながるのか、考えてみましょう。

 

気持ちに共感する声かけは、話したい欲求を生む

気持ちに共感する声かけとは、その瞬間の子どもの気持ちを言葉にすることです。

たとえば、大きな音がしてびくっとしたときには「びっくりしたね。大きな音がしたね」。友達におもちゃを取られたときには、「まだ使いたかったね。悲しいね」。眠たくてぐずっているときには、「もう疲れたね。眠たいね。いやになっちゃったね」などです。

共感する声かけは、子どもの黒子になったつもりで代弁していれば、自然と出てくるでしょう。

子どもからすると、自分の気持ちをわかってもらうことにより、安心する。嬉しい。心地よい。愛されている感じがする。…といった体験です。

つまりこうした共感的な声かけは、子どもにとっては単に単語を学ぶという意味だけでなく、気持ちをわかってもらえてる大きな安心感とつながっているのです。

そして、このように「ママは自分の気持ちをわかってくれている」「わかってもらえると、安心するし心地よい」といった体験をたくさんすることが、「もっとわかってもらいたい」「もっと気持ちを伝えたい」という欲求を育みます。

共感してもらう体験が、もっと話したい欲求の栄養だといえば、わかりやすいでしょう。

 

共感する声かけにより、コミュニケーションがとりやすくなる

共感する声かけを増やすと、単語数がすぐに増えなかったとしても、子どものコミュニケーション能力が大きく育つことはよくあります。

ある事例を紹介しましょう。1才7ヶ月の男の子のママが、「単語を3つぐらいしか話さず、言葉が増えない」と相談に来ました。

実際にこの男の子と接したりママからふだんの様子を聞いたりしたところ、発達障害の要素はそれほど顕著ではなかったので、声かけの仕方を実例を見せながら助言しました。そして1ヶ月後、その後の変化について聞かせてもらったところ、以下のような報告でした。

「単語数は2~3個しか増えてませんが、首をふることでYESとNOをはっきりと伝えられるようになりました。

また、前は私の言っていることがあまり耳に入らない印象だったのに、今は目を見てじっと聞いてくれます。

なんていうか、気持ちって伝わるものなんだ、とこの子が理解したように思います。

おかげでコミュニケーションがすごくしやすくなって、育児が前より楽になりました」

このママは、もともとが生真面目なタイプでした。悪気はないものの、子どもへの接し方は淡々としており、語学の先生が生徒に接するかのように言葉を教えようと頑張っているように見えました。

しかし助言を受けて、「気持ちを言葉にするというのは、考えてみたらやっていなかったと思います。ぜひやってみたいです」と話してくれ、まじめに関わり方を変えてみたのです。

男の子にしてみれば、わくわくしたときには「わくわくするね!」、楽しい時には「楽しいね!」、泣いているときには「嫌だったね」などと声かけをしてもらえるようになったことで、自分の気持ちをママがわかってくれていると感じるようになったのでしょう。

こうした共感される体験が彼のこころの中で変化を生み、自分の気持ちを伝えたいと思うようになったと同時に、ママの気持ちを受け取ろうとも思うようになったのです。

その結果、お互いにコミュニケーションがぐっとしやすくなりました。

こころなしか、前よりもママの表情が柔和になったような印象も受けました。ママのこころにも、変化が生まれたのでしょう。子どもを躾けるというスタンスだけでなく、子どもと一緒に楽しむというスタンスが加わったように思います。

よい循環が生まれたこの親子と、このまた1ヶ月後に会いました。

その結果、単語数がぐんぐん増えはじめ、ジェスチャーによる気持ちの表現もバリエーションが豊かになっていました。一見コミュニケーションがとりづらかったり単語数が少なかったりして発達の不安を感じる子どもでも、環境からの刺激を変えることで大きく育つという好事例です。

このように、子どもの話したい欲求やコミュニケーション能力は、ある程度は環境からの刺激によってつくられるのです。

実は、気持ちに共感する声かけは1才台だけでなく、子どもが大人になるまでずっと大切なことです。子どもが大きくなってもコミュニケーションのとれる親子でいたいのであれば、ぜひ子どもが小さいうちからママやパパはそのスキルを磨いておきましょうね。