真似をしたりされたりすることで、他人を認識するようになる

生後2ヶ月ごろから、機嫌のよい時に「あ〜、あ〜」や「あ、う〜」などと赤ちゃんはおしゃべりをするようになります。ママが同じ声のトーンやテンポで、「あ〜、あ〜」などと真似してあげると、にっこりと喜びます。

おしゃべりに限らず、赤ちゃんのあくび、まばたき、泣き声などいろいろなことを真似することができます。

このように関わってもらう体験を通して、自分がやったことと同じことをする存在がいる、と赤ちゃんはやがて認識します。つまり、自分以外の他人を認識する能力が開花するのです。

また、人間の脳は、自分と同じことをされると、自分が受け入れられていると感じるようにできています。受け入れられている感覚は心地よいものです。このように心地よい感覚を快体験と呼びます。

人と関わる際の快体験を積み重ねることが、他人に興味を持ったりを好きになったりするベースとなります。

おしゃべり遊びを2〜3週間やるうちに、今度は赤ちゃんがママの真似をすることができるようになります。ママが「あ、くっく〜」と言えば、赤ちゃんも同じように「あ、くっく〜」と返します。

そして、真似ができたことを赤ちゃんは嬉しそうに喜ぶでしょう。ママも、自分の働きかけに赤ちゃんが応えてくれたことが嬉しくて、笑顔になります。お互いに笑顔を交換しあい、相互的なやりとりであるコミュニケーションが成立します。

 

他人を認識する能力は、生後7ヶ月ごろには明確化する

他人を認識する能力の育ちにはある程度個人差がありますが、生後7ヶ月ごろには明確化します。

他人を認識するということは、自分を認識できることでもあります。この時期の赤ちゃんは、自分の名前が呼ばれると、振り向いて反応します。また、毎日一緒にいるママやパパといった人の呼び名を理解し、「ママはどこ?」と質問を投げかければママの居る方向を向きます。

このように個別の名前を理解できることは、自分という存在と、他人という存在の違いが明確になった証拠です。

 

コミュニケーション能力の育ちにくさは、1才ごろから顕在化する

コミュニケーション能力に発達の問題がある場合、1才ごろからママやパパにとってもその傾向がわかるようになります。

視線が合いにくかったり、人見知りや後追いがあまりなかったり、ママの表情を気にかける様子が乏しかったり、日常の言葉を理解できなかったり、とにかく落ち着きがなかったり…といった様子が見られます。

1才半健診や3歳児健診の際に、最寄りの保健センターで相談することができますが、それまで家でどうママやパパが関わるかで、大きく伸びます。幼児の2~3ヶ月は、大人の1〜2年に相当する成長をもたらします。

コミュニケーション能力は、関わり方次第で伸びるものなので、この時期に様子見だけして待っているのはもったいないことです。子どものコミュニケーション能力に不安を感じたら、今すぐに家でできる成長を促す関わり方を実践しましょう。

 

真似っこをしてあげることで、子どものコミュニケーション能力が開花する

子どもにコミュニケーション能力の育ちにくさがあると、「ほら、一緒に絵本を読もう」や「アンパンマンの踊りをやってみよう。ママの真似をしてごらん」などと誘っても、めったにのってきません。そもそも人への興味がまだ生まれていないので、ママが言っていることややっていることにそれほど関心ないからです。

そこで、まずは人への関心を育てることが必要です。

人への関心を育てる関わり方は、とくに難しいものではありません。誘ってだめなら、こちらから子どもの世界に入ってあげればよいのです。

声が出はじめた赤ちゃんに対して行うのと同じように、子どもがやっていることをママが真似してあげましょう。

たとえば、子どもが立ち止まって膝を軽く屈伸させていたら、ママもそばにいって同じリズムで屈伸運動をします。子どもがしゃがんだら同じようにしゃがみ、子どもが床を指でなぞったらママも床を指でなぞり、子どもが走り出したらママも同じように走りましょう。

そして、子どもがもし喋れたら言うであろう言葉を、行動に添えてあげます。たとえば、屈伸運動をしながら「なにしようかなあ」、床を見てしゃがんだら「なにか見つけたぞ」、床を指でなぞったら「つるつるしてるなあ」、走り出したら「よし、いくぞ!」などといった具合です。

「あ〜!」「チャチャチャチャ」など、子どもが声を出すなら、それも真似してあげてください。

このように関わる中で、ママが自分の真似をしていることにやがて子どもは気づき、ぱっと目を合わせるでしょう。

この瞬間を逃さずに、「一緒だね!」「おもしろいね!」「なんだろうね」などと気持ちを代弁してください。子どもが次の動作をしたら、また真似をします。子どもと呼吸を合わせるつもりでやるとうまくいきやすいです。

目を合わせているときに、ママが自分の真似をするのに気づくと、子どもは楽しくなってにこっとするはずです。

このとき、子どもは自分の世界をママと共有している感覚を体験します。気持ちを共有することが楽しいと体験することこそが、コミュニケーションの芽を開花させます。

こうした関わりを繰り返すうちに、子どもはママが自分の真似をすることを理解し、ちゃんと真似しているかどうか、ママの様子を見てチェックするようになります。他人に関心をもつようなった証です。

 

1ヶ月ほどで、効果が出ることが多い

コミュニケーション能力に育ちにくさを抱えた1~2才ぐらいの子ども達のママと、相談現場で会うことが多々あります。このような相談を受けたときは、上記で説明したような子どもの真似をする関わり方を実際に私がやってみせながら、ママに伝えています。

そうすると、「ほおっておいても1人で機嫌良く遊んでいるから、考えてみたら、敢えて自分から子どもと遊ぶことをあまりしてきませんでした」と話すママが多くいます。

コミュニケーション能力に育ちにくさのある子どもは、そもそも他人をあまり必要としていません。とくに一人目の子育てだと比較対象がないため、自分の子どもの状態が標準だと思ってしまい、問題点になかなか気づけないのが実情です。

ママが真似っこをしてあげることで、「人と関わることって楽しい!」と子どもが感じることが一番大切です。子どもの中で、コミュニケーションをする欲求が育つからです。

こうアドバイスをしてから、また1ヶ月後に会うようにしています。どの子どもも、明らかに前回と比べて変化が見られます。視線がもっと合うようになったり、ママや私の反応を待つようになったり、気持ちを自分から共有するようになったりと、成長が認められ、私もとても嬉しいです。

どのくらいの期間でどれくらいの成長が見られるかは、子どもそれぞれです。持って生まれた発達の偏りの大きさが異なるからです。コミュニケーションのとりづらさがやがて解消されるのか、それとも4〜5才以降も残るのかは、幼児の時点ではわかりません。

しかし、こうした関わり方を意識的にママやパパが行うことで、少しずつ育つのは確かです。

 

ママは自分を責めないで、これからできることに目を向けよう

関わり方を変えたあとに子どもの成長が見られると、もっとはやくこうしてあげればよかった、と後悔の涙を流すママがたくさんいます。でも、ママはどうか自分を責めないで下さい。

声かけをしたり、一緒に音楽に合わせて踊ったりしようとしたときに、子どもがのってこなければ、自然とこうした関わりをしなくなっても仕方ない面があったでしょう。

発達が順調な子どもであったなら、真似したりされたりといった関わり方をママは自然とやっていたと思われます。ママへの関心が自然に育っており、やり取り遊びを赤ちゃん時代からお互いに楽しめるからです。

コミュニケーション能力が育ちにくい子どもを育てていると、お世話をするやり甲斐を得られなかったり、自分が必要とされている感じがしなかったり、子どもとの絆を感じられなかったり、周りの同月齢の子どもと比較しては落ち込んだり、誰にも言えないけれど本当は子どもをかわいいと感じられなかったりして、苦しい思いをたくさんしてきたことと思います。

そんな中でも、毎日食事を与え、清潔な洋服を着せてやり、暴れられても歯磨きをし、風邪を引いたら看病をし、眠れない夜も頑張ってきた自分をどうか誉めてあげてください。今までも、たくさん頑張ってきたはずです。決してなにもしていなかったわけではありません。

過去のことを後悔したり責めたところで、子どもの発達は変わりません。後悔することにエネルギーを取られるよりも、今これから子どもにしてあげられることに目を向けましょう。やればやるだけ、成果が見えてくるはずです。