「手歌遊びをたくさんしてあげましょう。赤ちゃんの成長にとてもいいですよ」と聞いたことある方は多いでしょう。では、なぜ手歌遊びが赤ちゃんの発達を促すのでしょうか?

手歌遊び「いっぽんばし」を例にとって、コミュニケーション能力がどう育つのかを解説しましょう。

 

「いっぽんばし」の歌詞

まずは、「いっぽんばし」という手遊び歌の歌詞をご紹介します。

♪いっぽんばし♪

いっぽんば〜し、こ〜ちょこちょ

た〜たいて、つ〜ねって

かいだん のぼって・・・

こちょこちょこちょ!! 

 

全国的に有名な手歌遊びなので、聞いたことある方が多いと思います。

手遊び歌は代々歌い継がれるものなので、地域による特色があります。もしかしたら自分の知っている歌詞と少し違うかもしれません。同じ歌でも、微妙に言葉が違ったり、方言が入っていたりするようです。

しかし、赤ちゃんの成長にとって「この歌詞、この節でなければならない」ということはありません。自分の知っている歌を楽しい気持ちや懐かしい気持ちで歌ってあげましょう。大事なことは、ママも一緒になって楽しむことです。

 

「いっぽんばし」の遊び方

歌詞の下の( )内に、遊び方を書きました。

いっぽんば〜し

 (ママが指を一本立て、赤ちゃんの足の裏をすうっと一筋なぞる)

こ〜ちょこちょ

(続けて足の裏を優しくくすぐる)

た〜たいて

(4本の指でリズムに合わせて、足の裏をやさしく二回叩く)

つ〜ねって

(人差し指と親指で、足の裏をそっとつまむ)

かいだん のぼって・・・

(人差し指と中指で、足の裏から足の付け根に向かってトコトコと登る)

こちょこちょこちょ!! 

(足の付け根やお尻、脇腹などをくすぐる)

 

この歌は赤ちゃんの気持ちを引きつけるよう非常によく出来ています。

まず、足の裏という敏感な場所に「指でなぞる」というソフトな刺激を与え、さらに「くすぐる」ことで赤ちゃんの注意をひきつけます。3〜4ヶ月ごろの赤ちゃんですと、くすぐったくて足をぱっと動かしたり、ママの顔を見たりするでしょう。これが「遊びが始まるよ」という合図です。

その後「叩く」→「つねる」と刺激が続きます。赤ちゃんが感じる刺激の強さが、徐々に強まります。最初の「なぞる」「くすぐる」ではあまり反応しなかった赤ちゃんでも、さすがに「つねる」では遊びを意識するはずです。

このように遊びへの意識がしっかり芽生えたところで、「階段のぼって」と連続的な動きで刺激が足裏から足の付け根へ向かって移動します。赤ちゃんの気持ちは「なにかが登ってくる!」というワクワクドキドキで満たされます。気持ちの盛り上がりが自然と生まれるのがこの歌の良さです。

このように期待いっぱいになったところで「こちょこちょ!!」とくすぐるので、余計に赤ちゃんは大笑いをします。ワクワクドキドキした緊張感が解放されます。

 

手歌遊び「いっぽんばし」がどうコミュニケーション能力を育てるのか

「遊びの合図を与える」「気持ちを盛り上げる」「気持ちの解放」という3ステップがあることで、赤ちゃん自身の人とやり取りをする能力が育ちます。

まず赤ちゃんは「遊びの合図」に気づき、それを受け入れる段階を踏みます。つまり「遊びに乗る」のです。当たり前のことのようですが、自閉症や広汎性発達障害などコミュニケーションの育ちに難しさを抱えている場合、まずこの段階で遊びに乗れないことがあります。

「遊びに乗る」ということは、相手の働きかけに反応を示し、受け入れることです。これはコミュニケーション能力の土台と言えます。

つぎに「気持ちの盛り上がり」があります。ここでいっぽんばしを歌っているママと「気持ちの共有」が生まれます。赤ちゃんとママが一緒になってドキドキワクワクするのです。

誰かと気持ちを共有する体験は、人の気持ちに共感する能力のベースになります。

人の気持ちを読み取る力はコミュニケーションをする上で不可欠です。これが充分に育たないと、「空気の読めない人」や「自分勝手な人」になってしまいます。

最後の「気持ちの解放」では、笑い声をたてて自己表現をします。

「くすぐりが来ると思ったけどやっぱり来た!」「どこをくすぐられるのかドキドキした!」などといったそのときどきの感情が表に現れるでしょう。ママも一緒に笑うことで、赤ちゃんは自分の気持ちを受け取ってもらえた体験をします。

「自分の気持ちを受け取ってもらえた体験」は、自分をまるごと受け入れてもらっている「基本的信頼感」や、この世に存在していていいんだという「基本的安心感」につながります。これら「基本的信頼感」や「基本的安心感」が充分に育たないと、「常にどこかおどおどしていている」「どうしても自分に自信がもてない」「人を心から信頼することができない」などの問題が出てきます。

ただ手歌遊びを歌って一緒に遊ぶというひとコマでも、実はこのように赤ちゃんのコミュニケーションの発達が促されているのです。

 

親子で楽しんで歌いましょう

実際に赤ちゃんに手歌遊びをしてあげる際は、このような難しいことを考える必要はありません。最初にも述べましたが、大切なことは親子で一緒に楽しむことです。

我が家の長女も長男も、この歌がが大好きでした。2〜3ヶ月ごろはまだ反応がはっきりしないかもしれませんが、4ヶ月ごろには歌を覚えるようになりました。「階段のぼって〜」のところで、期待に満ちたキラキラとした目でこちらを向いている瞬間が大好きでした。

盛り上がりを大きくするには、「階段のぼって〜」から「こちょこちょ〜!」する間の「ため」を長くとることです。赤ちゃんは「まだかまだか」と期待に満ちた分だけ、さらに大笑いになります。

また私は「ありさんバージョン」や「ぞうさんバージョン」も歌っていました。この命名は私が勝手にしたものです。

「ありさんバージョン」では、ささやくような小さな声と、とても弱い刺激で行います。とても静かな笑いが生まれ、それはそれで楽しいです。

「ぞうさんバージョン」では、舞台縁者になったかのように出来るだけ大きな動作や大きな声で、強めの刺激を与えます。このバージョンでは、「いっぽんば〜し」と歌い始めた段階でたいていすでに子どもは笑い転げていました。

このように、アレンジは自由です。どのような歌い方をするにせよ、親子で楽しめればよいのです。ちなみに我が家の子どもたちは小学生になった現在でも、やってあげると大喜びをします。親子でスキンシップをとりながらのコミュニケーションはいくつになっても意味があるものです。