大きな音がすると、赤ちゃんがビクッとすると同時に両手両足を大きく広げてなにかにしがみつくようなしぐさをすることがありませんか?

あるいは、ママの髪の毛をぎゅっと握って離さないので痛い思いをしたことはありませんか? 私は娘をゲップさせれる際にうなじの髪の毛を何度も引っ張られ、痛かった記憶があります。予想以上に強い力で握るので、自分の首の後ろにある小さな手を開くのは意外と大変でした。

これはどちらも「原始反射」と呼ばれる新生児期特有の身体の動きです。原始反射は身体の動きを支配する中枢神経がまだ未発達なために起こります。脳からの指令と関係なく身体が勝手に動いてしまう状態です。

中枢神経の発達が進むにつれて原始反射は自然となくなります。逆に脳からの指令を通して身体の動きをコントロールできるようになるのです。

原始反射には「モロー反射」「把握反射」「吸てつ反射」「引き起こし反射」「原始歩行」の五つがあります。ひとつずつ見て行きましょう。

 

1)モロー反射

最初の例で挙げた「ビクッとすると同時に両手両足を大きく広げてなにかにしがみつくようなしぐさをする」のをモロー反射と呼びます。この反射を発見したオーストリアのエルンスト・モロー医師により名付けられました。

生後すぐから見られるモロー反射は、大きな音を聞いた時、急に首が後ろに傾いた時、衣服を脱いだ時、湯船に入れた時などに見られます。つまり環境の変化や体勢の変化、体温の変化などにより生命の危険を感じることに関連するようです。

これは大昔に人間が樹上生活をしていたころの名残と考えられています。木から落ちそうになったときに、しがみついこうとする動きというわけです。

この反射は生後4ヶ月ごろまでに消失します。

 

2)把握反射

髪の毛を握って離さないように、手足に触れたものをぎゅっと握ることを「把握反射」と言います。娘の出産後、手だけはなく足の指にもしっかり握る力があることに驚いたのを思い出します。

その握力の強さにびっくりしたママやパパも多いでしょう。実は自分の体重を支えられるほどの力なのです。これもモロー反射と同じように、樹上生活をしていた頃の名残りだと考えられています。

大人の指や髪の毛以外にも、お腹にかけておいたタオルや下に敷いたシーツなども知らない間に握っているものです。手を広げてみるとびっくりするぐらい綿ぼこりがたまっていることもあります。沐浴するときに、忘れず手や足の指の間まで洗ってあげましょう。

この反射は4〜6ヶ月ごろまでに消失します。6ヶ月以降は反対に意志により物を握ったり離したりできるようになります。たとえばおもちゃを見せると、自分から手を伸ばしてつかむことが出来るようになります。

 

3)吸てつ反射

赤ちゃんの口に乳首や指、タオルなどが当たると大きな口を開けて勢いよく吸いついてきます。このように口に触れたものに吸いつく反射を「吸てつ反射」と呼びます。

我が家では娘がお腹を空かせて泣き始めてもすぐに私が母乳をあげられない時に、パパが自分の指を差し出して間を持たせていました。自分では母乳を与えられないので、この方法で授乳を少し疑似体験できるのが嬉しかったようです。

私自身は、娘を出産して入院ベッドの上で初めて母乳をあげた時の感動を思い出します。

誰にも教わっていないのに、乳首に顔を近づけただけでぱくっとかぶりついて上手にチュッチュッと母乳を吸い始めた娘。その吸う力と勢いは想像よりもずっと力強く、娘の生命力に驚かされました。私の中では「鍵穴に鍵がぴったりと合う」ような感覚で、「おっぱいってこのために存在するんだなあ」と実感したものです。

この吸てつ反射があるからこそ、赤ちゃんは生まれた瞬間から生きて行くための力を備えているのです。

この反射は4〜6ヶ月ごろになると消失します。生後6ヶ月以上の赤ちゃんは、反射ではなく意志により口に物を運ぶことが出来るようになっています。たとえばスプーンを口に近づけると食べ物だと認識してお口をあーんと開けます。あるいは、おもちゃをしゃぶりたくて口にもっていくことができるようになっています。

 

4)引き起こし反射

赤ちゃんをあおむけにして寝かせ、両方の腕をもってゆっくりと状態を起こしていくと、それに合わせて自分から肘を曲げ頭を持ち上げようとします。このように首がまだすわっていないのに頭を持ち上げようとする動きを「引き起こし反射」と言います。

この反射は生後1ヶ月を過ぎると自然となくなります。この反射がなぜあるのかははっきりわかっていませんが、頭部を守る本能的な働きなのかもしれません。

首がすわるのは一般的に生後3ヶ月ごろです。首すわりを確認するには、同じようにあおむけにして寝かせた状態で両方の腕を持ってゆっくりと起こしてあげます。首が後ろに傾くことなくついてくれば、首がすわりが完成しています。

 

5) 原始歩行

赤ちゃんの両脇の下を手で支えてやり足を床につくようにすると、赤ちゃんは足を交互に上げて歩くような動きをします。これを「原始歩行」と言い、赤ちゃんは歩く能力が生まれながらにプログラミングされていると考えれています。

原始歩行をさせるコツは、赤ちゃんの両脇に手を入れて頭と一緒に上体を一度しっかりと伸ばしてから支えてあげ、赤ちゃんの動きのリズムと呼吸を合わせることです。赤ちゃんのご機嫌がよければ一歩、また一歩と足を踏み出してくれます。

この反射は生後2ヶ月頃で消失します。しかし生後6ヶ月前後になると、抱っこした際に床をキックする動きをするようになり、8ヶ月前後で足を交互に動かす伝い歩きができるようになります。この時期の動きは反射ではなく、赤ちゃんの意志による運動です。

そして実際に歩けるようになるのは1才前後となります。

 

原始反射は発達の目安

これら原始反射が新生児期に見られることは、「赤ちゃんが生きるために必要な運動プログラムを持って生まれており発達が順調である」ことを意味しています。

そしてこれら原始反射が消失した生後6ヶ月ごろからは、反射による運動ではなく意志でコントロールされた運動を行う力が育つことが大切になります。