<ご質問>

母乳育児が一番よい」という言葉を耳にしたことがありますが、これは本当でしょうか?

私自身、「いつか赤ちゃんが産まれたら母乳をあげたい」と漠然と思ってきました。また、母乳の栄養が赤ちゃんには一番よいとか、病気への抵抗力をつけてくれると聞いたことがあります。

幸いにも赤ちゃんを授かりましたが、母乳がうまく出ないのでミルクと混合で育てています。

でも「母乳育児ができない自分」にどうしても罪悪感を感じてしまいます。

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<回答>

このように「母乳育児が一番よいのにそれができない自分に罪悪感を感じてしまう」という方がいらっしゃいます。

確かに書店やインターネットで同様のことを意味する言葉を見かけることがあります。

ではそもそもなぜ「母乳育児が一番よい」と言われるのでしょうか?

 

母乳育児のメリット

母乳育児は、赤ちゃんの成長、ママの身体、そして母子関係においてプラスに働く要素を確かに持っています。

赤ちゃん自身へのメリットとしてよく挙げられるのは、「母乳を介してママの免疫力を身につける」ことや、「哺乳力(=哺乳に必要な筋力)が高まることで将来的な顎の発達や言葉の発音へよい影響がある」といったことです。

ママ自身のメリットとしては、「夜間や外出時に粉ミルクを作る手間がない」また「乳がん発生への抑制効果がある」などが挙げられます。

母子関係についてのメリットは、母乳の分泌によってママの脳内に精神的安定をもたらす物質「オキシトシン」が分泌されることです。このおかげで胸に抱く赤ちゃんをかわいいと感じやすかったり、寝不足や育児のストレスが緩和されやすかったりすると言われています。

このようなメリットがあるため、「母乳育児が一番よい」と言う見解があります。

 

母乳育児のデメリット

しかし一方で、母乳育児を続ける上で障害にぶつかることも多々あります。

例えば、食品アレルギーをもった赤ちゃんの場合です。こうした赤ちゃんをもつママは、自分自身がアレルゲンとなる食品を除去する必要が生じます。

この場合、一般的な食生活をする大人であれば、必ず口にする卵、乳製品などを除く必要があります。場合によっては日本人には欠かせない大豆などを除去する生活になります。こうした生活は想像以上にとても大変なことです。

また、人によっては母乳が順調に分泌されないケースがあります。あるいはママの職場復帰や病気などの事情でミルクに切り替えざるを得ないケースもあります。

その他には、赤ちゃん自身の哺乳力が弱くて、上手く乳首から母乳を飲むことができないケースもあります。

母乳育児を行う上でこうした障害がある場合、「母乳育児が一番よい」という考え方は、ママ自身に大きな罪悪感とストレスを生んでしまいます。

こんなふうに話してくださった方がいます。

「なんで自分のおっぱいは母乳を出せないんだろう? 

大きいだけでなんの役にも立たなくて、自分の身体なのに思い通りに行かなくて本当に悔しい。

自分のおっぱいなんて大嫌いって思ってしまい、毎日涙が止まりません。」

こんな精神状態のまま育児を続けていくと、赤ちゃんにとってマイナスの影響があると言えるのではないでしょうか。

また、母乳育児にこだわるあまり、赤ちゃんの体重が成長曲線よりはみ出し、ひどい場合には減少傾向を示すケースもあります。赤ちゃんの身体的成長を顧みずに母乳のみで育児を続けるのはとても危険です。

考え方を変える勇気を持とう

このように、「母乳育児が一番よい」と言う人は「母乳の分泌が順調なこと」を前提にしています。

自分の状況がそもそもの前提にマッチしないなら、この考え方との間にギャップが生じるのは当然のことです。罪悪感が生じるのは考え方が現状に合わないからなのです。あなたが悪いからではありません。

現状で赤ちゃんの成長や自分の精神状態がよい方向になっていないのであれば、考え方を変える必要があります。

ミルクで育てるメリット

ミルクでの育児でも、他の考え方を採用したり代替法を採用することで母乳育児の利点を補うことが出来ます。

たとえば、「ママの免疫力を赤ちゃんがもらえる」という説について考えます。

母乳で育てられた赤ちゃんとミルクで育てられた赤ちゃんを比較した場合、風邪を引くのはミルクで育った赤ちゃんだけなのでしょうか?

答えはNOです。つまり、ミルクで育てられても丈夫な赤ちゃんはいますし、母乳で育てられても体調を崩しやすい赤ちゃんはいるのです。ミルクを足す、もしくはミルクに切り替えたからといって突然赤ちゃんが病気になる心配はありません。

むしろミルクで育った赤ちゃんの方が、体重増加は早いと一般的に言われています。身体が大きい分、体力があることも多いようです。

「母乳かミルクか」よりも大切なのは、身体を維持するのに必要充分な量を摂取しているかどうかです。そのためにも体重増加率を確認しておきましょう。

哺乳力が気になるのであれば、様々なメーカーが開発している哺乳力アップを謳うおしゃぶりを試したり、食事が出来るようになってからはなるべく噛む回数の多いメニューを工夫したりすればよいのです。

また、ミルクを作る手間よりも、ミルク育児のメリットについて着目するとよいでしょう。

ミルクは母乳と比べて消化に時間がかかります。新生児期の母乳育児では夜間でも2〜3時間毎に授乳が必要ですが、ミルクだとだいたい5時間ほど赤ちゃんのお腹は持ちます。ママ自身が就寝する前にミルクを与えれば、ママにとって質の良い睡眠時間の確保ができます。

ママが美容院やちょっとしたお買い物に行く間、ミルク育児であれば「人に預けることができる」というメリットもあります。

母子関係への影響について言えば、まとまった睡眠時間を確保できることでママの気持ちが上向きになりやすくなり、赤ちゃんをかわいがる余裕も出てくるでしょう。

少なくとも、母乳が上手く出ないことで毎日鬱々と悩んでいるときよりも、ぐっとママの表情はよくなり、育児を楽しめるようになるはずです。

このように具体的に考えていくと、「母乳育児でなくても、赤ちゃんはちゃんと育ってくれる」と安心でできるのではないでしょうか。

母乳育児=母親 ではない

それでも「どうしても母乳をあげたい」とおっしゃる方もいます。こうした方には、「なぜそう思うのか?」を問いかけます。

すると、「母乳をあげていると、自分がママになったんだという実感がわいてくるから」「赤ちゃんにおっぱいをあげるのが昔から夢だった」「母乳をあげれないと母親失格のような気持ちになる」などといった答えが返ってきます。

そうしたお気持ちも分かります。

たしかに赤ちゃんに母乳をあげている様子は、母親の象徴のように思えます。しかしながら、世の中には母乳はあげているけれども、それ以外は放置し虐待と認定されるケースもあります。

母乳さえあげていれば、「温かい理想の母親」というわけではありません。

その他に行っているたくさんのことがあることを今一度思い返してみましょう。オムツを日に何度も取り替え、気温に合わせた衣服に調整し、抱いてあやしたり、やさしく声かけしたり、夜間の異変に気を配ったりと、実に様々なことをママはやっています。

母乳を与える以外のその他たくさんのお世話も、母乳を与えるのと同等に大切なママの役割です。「そうしたたくさんのことを自分はやっているんだ」とぜひ再認識し、ママとして胸を張ってほしいものです。