<ご質問>

もうすぐ娘が生後二ヶ月になります。なかなか母乳が上手く分泌されない状態が改善されず、悩んでいます。

母乳育児を推奨する助産院に一度相談に行きました。母乳の出をよくするための乳房マッサージと食事指導を受け、自宅で実践中です。

また「与え続けていれば母乳は必ず出るので、なるべくミルクを足さないで頑張りましょう」と言われました。

しかし、やれることはすべてやっているつもりなのに、母乳の分泌が改善されません。授乳時間毎に母乳を飲ませますが「足りない!」と言わんばかりに娘に泣かれ、落ち込んで涙が出てきます。

ミルクを足すべきか悩みますが、そもそもいつどれくらいあげたら良いのかがわかりません。

いったいいつまで頑張り続ければよいのでしょうか?

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<回答>

母乳分泌に関して、このようなご相談をいただくことがあります。

いろいろ努力しているのに思うように母乳分泌が改善されず、つらい毎日だったと思います。まずはこれまで頑張って来た自分をよくねぎらってあげましょう。

まずは母乳育児を頑張り続けるかどうか判断するために、赤ちゃんの変化を確認する必要があります。

 

体重の増加率を確認

まず大事なことは、赤ちゃんの体重増加率を確認することです。

母子手帳にある体重の成長曲線に、「出生体重」と「その後に計測した体重」を記録しましょう。体重が重いか軽いかではなく、曲線に沿った増加率を示しているかどうかが重要です。

曲線から増加率が減少方向にはみ出しているなら、母乳摂取量が足りていないひとつのサインです。

新生児期(生後0~3ヶ月)では、一日当たり25〜30gの増加率目安となります。増加率は下記の式で計算します。

増加率 =(「現在の体重」−「前回測定時の体重」)÷経過日数

たとえば生後40日目の赤ちゃんがいたしましょう。「現在の体重」が4000gであり、生後30日目に測った「前回測定時の体重」が3700gだとします。

4000gから3700gを引くとその差は300gです。この値を経過した日数(40-30=10 )で割ります。300÷10=30 で、増加率は一日当たり30gになります。

つまりこの赤ちゃんの体重増加率は順調で、母乳量は今のままで足りていると判断できます。

では同じように生後40日目の別の赤ちゃんの場合を見てみます。「現在の体重」は同じ4000gだが、しかし生後30日目に測った「前回測定時の体重」が3850gだとしましょう。

計算式は (4000-3850)÷10 = 15 となり、一日当たりの増加率は15gです。

この赤ちゃんの場合は増加率が低いので、母乳量が足りていないと判断します。

注意点としては、測定と測定の間を一週間程度設けることです。大人でも食欲が日によって異なるように、赤ちゃんも母乳をよく飲む日と飲まない日があります。2~3日しか経過していないと増加率の信頼性が乏しくなってしまうので気をつけましょう。

また毎日のように測定するとママ自身が今度は体重のことばかり気になってノイローゼ気味になる心配があります。ストレスは母乳分泌を妨げる要因になります。母乳育児で行き詰まらないためには「上手く行かなかったら誰かに相談しよう」という気持ちの余裕を保つことのがコツです。

計算した増加率が「目安の一日25~30gを下回っている」もしくは「境界ぎりぎりぐ」であるなら、ミルクを足す必要があるでしょう。

新生児期の体重増加率の低さは生命の危険につながる恐れがあります。ひとりで抱え込まずに必ず専門機関に相談してください。

 

おしっこと便の回数を確認

体重以外に、赤ちゃんの変化を確認する指標はおしっこと便の回数です。

おしっこの回数は一日6回以上が目安です。便は個人差が大きく、一日に3回する赤ちゃんもいれば、3日に一回という赤ちゃんもいます。3日に一回でもお腹がカチカチに張ることなくご機嫌であれば大丈夫です。

これらが一定のペースで保たれているかを確認しましょう。

「おしっこや便の回数がここ数日減ってきた」という場合は、母乳量が足りないサインと考えられます。

 

ママの精神面も大切

私の勤めていた保健センターで、新生児期のママと赤ちゃん対象の座談会が開かれた時の事例をお話しします。

生後2ヶ月になるのに体重は4010gと小柄で(この時期の平均は4200~6800gぐらい)、一日当たりの増加率が24gの赤ちゃんがいました。

ママにとって一人目のお子さんで、育児に関する知識はなく、この日が日用品買い出し以外の初めてのお出かけだったそうです。

ママは「夜中も一時間ごとに泣かれて授乳してるので、自分が寝不足で参りそうです。2570gと小さめに産まれたからとにかく母乳をあげなくちゃと毎日頑張っています。ミルクを足すにしても、いつどれくらい足せばよいのかわからなくて。」と話してくれました。

体重増加率は24gと目安ぎりぎりぐらいで小さいながらも成長曲線に乗っているので、赤ちゃんの体重だけを基準に考えるとミルクを足すか微妙なケースです。

しかしながら、夜中に一時間毎に泣くのは、母乳が足りないと考えられます。乳房に母乳が充分貯まる前に飲んでしまうため一回で飲む量が少なく、すぐに空腹になってしまうのでしょう。

またママの体力が心配されました。毎晩一時間ごとに起きていてはとても睡眠が足りません。

また「寝ても覚めても母乳が足りているかを心配してしまう」「パパは仕事が忙しくてほぼ母子家庭状態」「息抜きをするような余裕はない」「記憶力が低下し考えがまとまらない」など精神面でも追いつめられていました。

そこで助産師さんがミルクの足し方の助言を行いました。具体的には、「毎回の授乳を片乳15分ずつで切り上げ、後はミルクを100ml足す」という方法です。

その結果、授乳間隔が2〜3時間開くようになり、2週間後にはずいぶんお顔や手足がふっくらしました。体重は4458gになり、増加率は一日当たり32gの計算まで増えました。

睡眠時間が増えたことでママの表情も良くなり、

「あのとき相談できてよかったです! 

今思えば母乳に必要以上にこだわっていた気がします。

やっと育児が楽しいと思えるようになってきました」

との言葉が出ました。

このケースのように、「ミルクを足す方法に切り替えたら育児が楽になった」「赤ちゃんをかわいいと思えるようになった」というママにたくさんお会いしてきました。

「母乳育児にこだわり、体力も気力もギリギリで育児が楽しめない毎日」と「ミルクを足すことにはなったけど、気持ちが上向きで育児が楽しい毎日」だったら、どちらがよいですか?

ママと赤ちゃんの心身の状態は連動するものです。ママの状態がよければ赤ちゃんのご機嫌もよくなり、お互いに良い時間が増えるプラスのスパイラルが産まれます。

赤ちゃんの変化だけでなく、ママの状態によってもミルクを足した方がいいこともあるのです。

寝不足と慣れない育児で、新生児期のママは冷静な判断力が鈍っていることが多いものです。

まして、育児にはわからないことや自分で気づけないことがたくさんあって当然です。

行き詰まりを感じたら遠慮せずに専門機関に電話して相談の予約をとりましょう。最寄りの保健センター、出産した病院の母乳外来、もしくは近所で評判の助産院などで相談に乗ってくれます。