Q. 保健センターの1才半健診で、「子どもの言葉が遅い」ことを保健師さんから指摘されました。

今出ている単語は「マママ〜」だけです。これはママを意味しいてると思いますが、パパを意味しているときや他の場面で使うこともあります。知り合いの先輩ママには「うちの子どもも1歳台は全然言葉が出なかったけれど2才になった頃から一気に話すようになったの。だからきっと心配ないよ」と言われました。

健診では心理士による「心理発達相談」を勧められました。しかし私としては2才まで様子を見たい気持ちがあったので、この時はお断りしました。

また同じように言葉が出ていないのに心理発達相談を勧められなかったお友達のお子さんも知っています。自分の子どもだけ心理発達相談へ案内されたことにどこか納得いかない気持ちがあります。

1才半の月齢で「言葉の発達に問題がある」と判断するポイントはどこにあるのでしょうか。

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A.  1才半健診で「言葉の遅れ」を判断する基準のひとつは、お子さんから「明確な意味をもつ単語が三つ以上出ているかどうか」です。ただしこれ以外の発達も確認し、総合的に判断しています。

一般的な基準は以下の4点です。

1)  明確な意味を持つ単語が三つ以上出ているか

2)  意志を伝える手段としての指差しが出ているか

3)  視線はしっかり合うか

4)  言葉の理解があるか

ではそれぞれについて詳しく解説しましょう。

 

1)  明確な意味を持つ単語が三つ以上出ているか

例えば「ママ」「パパ」「ワンワン(犬)」「ブーブー(車)」などがこれに該当します。

ひとつの対象(=ものや人)に対してひとつの言葉が割り当てられることを「象徴機能」と言います。この「象徴機能」が発達して初めて子どもは明確に単語を使えるようになります。

ご質問者のお子さんの言う「マママ〜」は、お母さん以外の意味でも使われているので、まだ「象徴機能」が充分に発達していないと考えられます。

ちなみに話し始めでは「ワンワン」が「犬」だけではなく「猫」や「豚」など四本足の動物一般を指すことがあります。この時期はまだ耳やしっぽの形などの細部で動物を見分けることが出来なくても心配ありません。

この場合の「ワンワン」は「四本足の動物=ワンワン」というルールに従っており、「象徴機能」を持つ言葉として数えることが出来ます。

 

 2)   意志を伝える手段としての指差しが出ているか

1才前後から子どもは明確な「意志」を持ち始めます。0歳児の頃は単にかまってもらえずに泣いていたのが、この頃になると「つまらないからお外に出たい」「お腹が減ったからバナナがほしい」など、要求が具体的になってきます。

さらに自分の意志を「人に伝えたい欲求」が育ち、その手段として「指差し」をするようになります。「指差し」の出現はだいたい1才前半です。

たとえば、「つまらないからお外に出たい」ときは玄関の方向を指差したり、「お腹が減ったからバナナがほしい」ときはキッチンカウンターにあるバナナを指差したりします。このように意志を伝えるための指差しが見られない場合は、ふたつの発達上のつまずきを検討する必要があります。

ひとつは「心理的な発達がゆるやかな可能性」です。まだこのような「意志」が充分に発達していない段階にいるのかもしれません。

もうひとつは「コミュニケーション能力や社会性における育ちにくさがある可能性」です。

通常1才頃より「自分の気持ちを人に伝えたいという自然な欲求」が育ち、そのためには「指差し」や「言葉」という手段があることを自然に学習します。コミュニケーション能力や社会性になにかしらの育ちにくさがある場合、この自然な学習がなかなか進まないことがあるのです。

具体的な例をあげましょう。

たとえばある1才半のお子さんは、外に出たい時は玄関を指差すのではなく、玄関に走って行きドアに張り付いて泣きます。バナナを指差してそれが食べたいという気持ちを表現するのではなく、自分でなんとかキッチンカウンターによじ登ってバナナを取ろうとします。

ひとりで絵本を見ているときは車や動物の絵を「指差し」します。しかし誰かが「ブーブーはどれ?」と聞いてもその通りの指差しは行わず、絵本を閉じたり膝によじ登ったりするなど興味が他へ移ります。

このお子さんのように「指差しの形」は出来るが「意志を伝える手段」としての指差しが出ていないことがあります。こうしたケースでは、この時期までに自然に成長するはずの「コミュニケーション能力や社会性においてなんらかの育ちにくさがあるかもしれない」と考えます。

 

3)  視線はしっかり合うか

通常1才半頃には、健診で初めて合う保健師さんが「こんにちは」とご挨拶をしたら視線を合わせることができます。にっこりしておじぎを返す子もいれば、不安そうにママにひっつく子もいます。

ご挨拶を返せるかどうかはこの時期まだ問題ではありません。重要なのは「この人は誰だろう」と確認する目的で視線をしっかりと合わせることができるかどうかです。

保健師さんに挨拶されても「全く顔の方を見ない」あるいは「ちらっとは見るが視線がふわふわ漂い全く感心がなさそう」などの反応する場合、コミュニケーション能力や社会性の面での育ちにくさが隠れている可能性があります。

4)  言葉の理解があるか

「ワンワン」「チャ(お茶)」などの単語が出ていても、言葉を理解していないことがあります。よく観察すると、ママが「ワンワンがいるね」と言った後に「ワンワン」と繰り返しているだけということがあるのです。

オウムが繰り返し聞かされた言葉やフレーズを暗唱する様子に似ていることから、専門用語では「オウム返し」と呼びます。オウム返しで言っているだけなのかを確認するには、簡単な指示を出してみましょう。

例えば「ゴミをポイしてきて」や「ティッシュ取ってきて」など日常生活に即した声かけを行います。

この時、ゴミ箱やティッシュを指差したり視線を向けたりするなど言葉以外のヒントを与えないよう注意して下さい。ママの動きや視線を手がかりに判断していることがあるからです。

言葉のみを聞いて指示に従うことが出来ていれば、言葉の理解があると考えられます。

 

発達障害があるかはまだわからない時期

1才半健診では以上の4点を総合的に見た上で「心理発達相談」(名称は「心理個別相談」「子ども相談」など機関により名称が異なります)に案内するかどうか判断するのが一般的です。

4点のうちどれかひとつでも疑問符がついたら、念のために「心理発達相談」を案内する保健センターが多いようです。発達障害のお子さんの成長には、「問題の早期発見」と「早期療育」がもっとも大切だと考えられているからです。

しかしながら、案内されたからといって「うちの子は発達障害なんだ」と早合点しないようにしましょう。

幼児期の発達は個人差がとても大きく、よほど特徴が顕著でない限り(たとえば1才半の時点で「お座りが出来ない」「物を持つことができない」など)4才前に発達障害の診断が確定することはありません。大切なことは、専門的な視点から子どもの現状を把握した上で、その子が伸びるような関わり方や環境整備を行うことです。

関わり方や環境を整えることで大きく成長し、学校に上がる頃には問題視することがなくなるケースはたくさんあります。

家庭内での対応で充分なケースもあれば、療育機関等でさらに関わりを増やした方がよいケースもあります。心理発達相談を薦められた際には、こうした関わり方のコツや環境面での注意点をアドバイスしてもらうといいでしょう。